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連れ去り勝ち?離婚に際する親権問題

3組に1組が離婚をするという時代になり、離婚すること自体がそんなに珍しくない世の中です。

離婚の際には、財産分与に年金分割等夫婦間で取り決めをしなければならないことがたくさんありますが、お子さんの親権の決定は、そのうちの1つです。

このコラムでは、子どもの親権獲得のためにはどのような事情が必要なのか解説し、連れ去り勝ちという噂の真相にも迫ります。

結論からいってしまうと

・母親優先の原則

・主たる監護者論

現状の裁判所は、いまだにこの2つを重視する傾向にあります。

それぞれについて解説するとともに、親権獲得のため、あるいは円滑な面会交流実現のためにすべきことを考察していきます。

まず1つめ、母親優先の原則について解説します。

「母親優先の原則」とは特に乳幼児については、母親の存在が不可欠であるとして両親の離婚の際には、母親を親権者に指定するべきという考え方のことをいいます。これが重視されると、父親が親権者に指定されることはほとんどない、ということになってしまいます。

しかし、心理学的な側面から考察すると子どもにとって必要なのは母親の存在ではなく、「母親としての役割をはたす人間」であって、実際の血縁上の母親ではありません。

そこで、近年では、生物学的な母親を優先するのではなくて、母性的な役割を果たす者との関係を重視する必要があるとして「母親優先の原則」から「母性優先の原則」と呼ばれるようにもなってきています。

こうした考えが広がるとともに、女性の社会進出や父親の育休取得率およびイクメン推奨風潮の中よって、母親だから確実に親権を獲得することができるというわけではなくなりました。

もちろん、現実問題として母親が親権を獲得するケースは今現在でもかなりの割合を占めています。しかし、こうした風潮の変化によって、母親だから親権の心配はしなくていい、という状態ではなくなる日もそう遠くないと思います。

次に主たる監護者論について解説します。

主たる監護者論は、監護の継続性という表現をされることもありますが、要するに子どもにとって親と子どもの精神的な結びつきは重要であるから、このような結びつきを断絶させるような監護者の変更はするべきではないという考え方です。

この考え方に基づくと、夫婦が別居を開始した際、幼い子が片方の親に継続的に監護された状態である場合、そのままの状態を維持するように親権者の指定を行われてしまうことがあります。

これではまるで「連れ去り勝ち」になってしまいます。そして裁判所は男女問わず、監護継続性を重視する傾向にあるため、最近では別居する際には連れ去られる前に連れ去ろうという働きかけをする夫婦が少なくないようです。

しかし、子供にとっては別居親も同居親も大切な親であることには変わりありません。親権がほしいあまりに、どうしても相手方を排斥して子供を奪い合う姿勢になってしまいがちです。しかし、離婚と親権は全く別問題です。別居親でも同居親でも子供にとってはかけがえのない親であることを認識し、相互に尊重しあう姿勢が大切であり、そう親こそが子供の育児にとって良いのではないか…という考え方があります。

これがいわゆる「フレンドリーペアレントルール」です。すなわち、フレンドリーペアレントルールとは、他方の親と友好的(フレンドリー)な関係をとろうとしている親の方が親権者として的確だと判断する考え方のことをいいます。とりわけ他方の親の面会交流について寛容である場合等がそれにあたります。

この考えを採用した裁判例が平成28年3月29日千葉家庭裁判所松戸支部の裁判例です。この裁判例は、後の控訴審で結論が覆り、その後の最高裁で控訴審の結論のまま確定してしまうのですが、松戸支部の判断は非常に注目されたものでした。

この裁判は子の同居親である母親側からの離婚請求に対し、別居親である父親は離婚を争った上に、予備的な付帯処分の申立を行いました。その付帯処分の申立というものが、仮に離婚請求が認容されたとしても、単独親権者の指定について、別居親(父親)に指定するべきであることのみならず、年間100日相当の綿密な監護計画に基づく面会交流要項に沿った面か交流義務を親権者の責任として負うことを宣言している内容でした。そして、それができなかった時には親権変更されてもやむを得ないとまで宣言していました。

つまり、自分が親権者になったときには、親権者の責任として年間100日は母親に会うことができるような面会交流計画を立てました、これを実行します、仮にできなかったら親権を母親に変更されてもしかたないと思っていますと裁判所に伝えたわけです。

この父親の主張を松戸支部は認めて、別居親である父親を親権者に指定しました。これがフレンドリーペアレントルールを採用したとされる裁判所の判断です。

もちろん先に述べたとおり、この裁判自体は後々の控訴審や最高裁で覆ってしまうので、フレンドリーペアレントルールが最後まで認められているわけではありません。

しかしながら、親権を考えるときには、非常に大切な考え方だと思います。離婚訴訟を行う際には夫婦間での憎しみが表立ってしまいがちですが、親権を考える際には、いったん離婚事由とは切り離して考える視点が大切です。

「連れ去り勝ち」という風潮に流されて足早に子供を連れ去るのではなく、父親と母親それぞれが子供にとっての最善を考えることができれば、それが何より子供にとって幸せなことだなと思います。特別の事情がない限り、両方の親との関係が継続することが子の福祉に資するという前提に立てば、フレンドリーペアレントルールがもっと浸透していくべきではないでしょうか。

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